頚椎症とは
頚椎は背骨の上部、首の部分のことです。背骨は縦に積み上がっており、背骨同士の間には椎間板があり、それがクッションの役割を果たしています。椎間板は20歳を超えると変性しはじめ、それが進むことで椎間板にひびや潰れなどを起こします。
さらにとげ状の骨棘や靱帯の石灰化・骨化なども起こるようになり、こうしたさまざまな原因によって脊髄や神経根が圧迫・刺激されて、痛みやしびれ、手足の動きが悪くなって日常的な動作にさまざまな支障を起こしている状態を頚椎症と呼びます。
頚椎症の主な症状
局所症状、神経根症状、脊髄症の3種類に分けられます。局所症状は首や肩の痛みや肩こりなどを起こしますが、手や腕にしびれを起こすことはありません。神経根症状は、片方の首・肩・手に痛みやしびれを起こし、腕の筋力が低下したり、感覚が鈍くなったりすることがあります。
脊髄症では、両手や両足にしびれや動きにくさを生じます。ボタンの付け外し・お箸や筆記用具をうまく使えなくなるなどの腕・手・指の症状や、足がもつれて手すりなどの支えがないとうまく歩けないといった症状を起こすこともあります。
頚椎症の原因疾患
頚椎内の脊柱管にある脊髄が圧迫・刺激されて起こる頚椎症性脊髄症と、脊髄から分かれて腕や手指につながる神経根が圧迫・刺激されて起こる頚椎症性神経根症に分けられます。
検査と診断
問診で痛みなどの症状が起こりはじめた時期や症状の変化、既往症や服用している薬、ライフスタイルなどについて丁寧にうかがいます。触診をしながら症状を確認していき、頭を後ろにした際の症状の変化や四肢の反射などを観察します。
X線検査で頚椎の変化を確かめますが、中年以降では頚椎症性変化がほとんどの場合は確認できますので、画像の所見だけで判断はできません。神経内科疾患との鑑別のためにも、総合的に判断して診断します。
治療法
頚椎症性神経根症は、自然治癒が期待できる疾患です。痛みが強い場合には薬物療法を行い、適切な牽引を行うこともあります。また、頚椎が後方にそらされると症状を起こしやすいため、注意が必要です。
強い痛みが鎮まってから、しっかり治るまでには数か月以上かかるため、じっくり治しましょう。ただし、強い痛みがあって日常生活に多大な支障がある場合や、筋力が大幅に低下している場合には、手術を検討することもあります。
脊髄症は、ちょっとふらついて転倒しただけで脊椎損傷を起こして四肢麻痺につながる可能性があります。そのため、転倒しないよう特に注意が必要です。日常生活に支障を生じる手指の運動障害がある場合や、手すりがないと歩行や階段の昇降がおぼつかない場合には、手術を検討します。
日常の対策
あごを上げるなど、頚椎が後屈すると、圧迫を強めてしまい、痛みが強くなり、回復も遅くなってしまいます。いつも意識して頚椎の後屈を起こさないようにすることが重要です。頚椎の後屈は、日常のかなり幅広い動作で無意識に行っています。
うがいや歯磨き、シャンプーやブラッシング、パソコン画面を見るなどにも注意が必要です。また、飲物はできるだけストローを使って飲むことで、頭を後屈させないですみます。さらに、枕は少し高めのものを使うようにしてください。